アスタキサンチン研究

アスタキサンチンの健康機能

アスタキサンチンは、以下の如く様々な角度からその機能に関する研究が行われている。

(1) 脂質過酸化抑制1,2,3)
(2) 免疫賦活4,5)
(3) DNAの酸化的損傷抑制6)
(4) 発ガン及びガン転位抑制7,8)
(5) 抗炎症(間接リウマチ痛、手根幹症候群の痛みの軽減。口内炎、単純疱疹の治療ないし発症防止。CRP値の低下)9,10)
(6) 白内障、黄斑変性症の予防・改善11,12)
(7) 紫外線による日焼け防止、皮膚保護13,14)
(8) 生殖機能向上15)
(9) 学習・記憶能力向上16)
(10) 筋肉萎縮抑制17)

いずれも強い活性酸素消去作用が作用発現の原点となっている。

この中から、我々の関係した共同研究の結果を中心に、いくつかの報文も引用しアスタキサンチンの健康機能について解説する。

老化や病気の原因となる活性酸素

最近ではガンを始め生活習慣病などの多くは活性酸素によるものと考えられるようになってきました。

活性酸素とは体内でエネルギーが産生される過程で発生する、あるいは体内に侵入した細菌やウイルスなどを死滅させるために発生する酵素のことを言います。これは過激な反応を引き起こす不安定状態の酸素です。

私たちの体内では、当然発生した活性酸素を中和する仕組みも持っているのですが、消去しきれなかった活性酸素は細胞やDNAを傷つけ、脂質に対しても過酸化という悪影響を与えます。

その結果、細胞や生体反応を変性させ、ガン、動脈硬化、糖尿病、白内障、老化などの様々な障害につながってゆくことが分かってきたのです。

活性酸素の発生要因

●ストレス
●放射線(レントゲン撮影、放射線治療)
●多量の飲酒、喫煙
●油を使った菓子、インスタントラーメン等の古くなった食品
●細菌、ウイルス、カビ
●大ケガ、手術など
●血行不良や虚血時
●紫外線
●薬物(特に抗癌剤)
●工事や車の排気ガス(窒素酸化物)
●息切れするような激しい運動
●電磁波(電子レンジ、携帯電話、パソコン)
●化学物質(洗剤、柔軟材、建築溶剤、接着剤、除草剤や農薬、食品添加物)

フリーラジカル消去活性 18,19,1)

ビタミンE(V.E)は抗不妊ビタミンと呼ばれた時もあったが、活性の本質は脂質の過酸化、特に生体膜(細胞、赤血球、ミトコンドリア、ミクロソームなど)を構成する脂質の過酸化を抑制することとである。

ビタミンCやβ-カロテンも抗酸化物質の代表的なものであるが、関連グループはin vitroにおけるXanthine-Xanthine oxidaseの反応系でSuperoxide anion radical (O2-)又はHydroxyl radical(・OH)を発生させルミノールを加える蛍光反応を測定しradical生成抑制効果の比較を行った。(図1)

実験方法
 Materials and Methods

1. oxygen free radicalを発生させる。oxygen free radicalは以下の様に発生させた。
a. superoxide anion radical:5mlのTris-HCl buffer中でxanthine(100μM)を8mU/mlのxanthine oxidaseで反応させた。
b. hydroxyl radical:全量2mlの反応液(5mM Tris-HCl, 100μM FeCl3, 100μM EDTA, and 100μM xanthine)にxanthine oxidaseを加えることで反応を開始させ、hydroxyl radicalを生じさせた。

2. 試料
Cyanotech Corporation(Hawaii)提供のBioAstin Oleoresin(5%天然アスタキサンチン含有)を用いた。

3. 蛍光分析
活性酸素種の指標となる化学ルミネセンスはChronolog Lumivette luminometer(Chronolog Corp., Philadelphia, PA)を用いて測定した。この定量は3mlのミニバイアルで行う。このバイアルを測定前に37℃に保温し、それぞれのバイアルについてbackground 化学ルミセンスを測定した。サンプルは15分間37℃で加温した後、4μMのルミノールを加え、蛍光反応を生じさせた。結果はcount/unit・timeの値からbackgroundの値を引いた数値を求めた。

4. 統計学的解析
各群の間における有意差はstudentのt検定によって求めた。この分析を用いて5%以下を有意差があると判断した。各値は4~6回測定した値の平均値±標準偏差値で表した。

結果

A. in vitroの系における、生化学的に発生させたsuperoxide anion radical除去能について抗酸化物質とカタラーゼを加えたsuperoxide dismutaseとの比較 Table.1 に抗酸化物質によるsuperoxide anion radical除去能の比較が示されている。化学ルミネセンスは一般的に活性酸素種の生成を定量するために用いられる。ポジティブコントロールとしてカタラーゼ(200μg/ml)を加えたsuperoxide dismutase(200μg/ml)を用いた。

B. in vitroの系における、生化学的に発生させたhydroxyl radical除去能について抗酸化物質とmannitolとの比較  Table.2 には抗酸化物質によるhydroxyl radical除去能の比較が示されている。化学ルミネセンスは一般的に活性酸素種の生成を定量するために用いられる。hydroxyl radicalの強いスカベンジャーであるMannitol(1.25μM)をポジティブコントロールとした。

図1 Astaxanthin exceptionally Powerful redical scavenger
【Debasis Bagchi, Ph.D.Pharmacy Science, Creighton University School of Health Sciences, 2500 California Plaza, Omaha, NE 68178】

また幹らはヘム鉄を用い、リノール酸含有ジメチルスルホキサイド中でフリーラジカルを発生させ、in vitroにおける各カロテノイドのラジカル補捉活性を検討した結果、アスタキサンチンのED50は200nMと最も活性が強く、対照として用いたゼアキサンチン、ルテイン、β-カロテン、α-トコフェロールのED50は各々400、700、960、3,000 nMであった。さらに第一鉄イオンを用い、ラット肝ミトコンドリアでのペルオキシラジカルによる脂質過酸化連鎖反応の抑制を検討した結果、アスタキサンチンはα-トコフェロールに対し約1,000倍の活性が認められたとしている。

コレステロールの酸化抑制

LDLの被酸化能に及ぼす影響としてin vivo studyでは、健常者13名に対し2週間、0.6mg~21.6mg/日投与することによりLDL被酸化のlagtimeが有意に延長することが明らかにされている。2)

アスタキサンチンを含む餌をラット(雄)に30日間与えたところ、HDLが、コントロール群(Co群)では42.4mg/dLであったのに対し、投与群では57mg/dLとなりHDLの増加を認め、これに対しLDLは12.5mgから9.6mgに減少していた。β-カロテンやカンタキサンチンではこのような効果は見られていない。20)

免疫賦活への影響

免疫系には自然免疫系と獲得免疫系があり、侵入する抗原に対応して特異的に働く免疫を獲得免疫と呼ぶ。リンパ球(Tリンパ球、Bリンパ球)やマクロファージは獲得免疫を導く主要細胞であり、その中でTリンパ球は加齢の影響を受けやすい。

そこで、研究グループは加齢にともなう免疫機能に対するアスタキサンチンの効果について検討した。アスタキサンチン含有水を自由採取させた成熟マウス(5週齢)及び高齢マウスに卵白アルブミン(OVA)抗原を投与し、腸管粘膜免疫応答を測定した結果、OVAに対する抗原特異的IgA抗体量は成熟、及び高齢マウスともにCo群と比較して有意な高値を示し、血清中IgG1抗体量は特に高齢マウスで高い値を示した。

脾臓リンパ球T細胞に対しても、成熟マウス、高齢マウスともにアスタキサンチン群で活性化をみとめ、アスタキサンチンは、高齢マウスにおいても抗原に対応する免疫応答を亢進することが考えられる。5)(図2)

腸管粘膜中lgA抗体量(左)と 脾臓細胞におけるTリンパ球幼弱反応(右)図2 腸管粘膜中lgA抗体量(左)と
脾臓細胞におけるTリンパ球幼弱反応(右)

炎症とアスタキサンチン

炎症はウイルス、細菌あるいは紫外線、熱など生物的、物理的さらに化学的物質による損傷や刺激に対して生体が反応して起こる局所的な徴候で、そこには活性酸素が炎症症状の発生に関与していると考えられている。代表的な炎症モデルであるラットのカラゲニン浮腫に対して、ウシのCu、Zn-SODを静注することで足の腫れを抑えることが認められている。21)リウマチ性関節炎の患部に集まる好中球は、O2-を発生させ、さらに炎症をプロモートすることが知られているが、これに対しCu、Zn-SODは同様に痛みや強張り、歩行において有効であった21)、として活性酸素との関連を述べている。以下にTKKの関連グループが行った抗炎症効果についてその概要を報告する。

①リウマチ性関節炎に対するアスタキサンチンの影響

ウシ関節腔内のヒアルロン酸がキサンチンとキサンチンオキシダーゼで生じるO2-とヒドロキシラジカル(・OH)により分解されることが報告されて以後、炎症性の関節疾患に活性酸素やフリーラジカルの関与が注目されている。22)

リウマチ性関節炎患者の関節には好中球が多くみられ、抗原に対して活性酸素を放出するが、自己細胞が標的(抗原)とされているために幹部は一層活性酸素の障害を受けることになる。リウマチ性関節炎への治療に、アスタキサンチン含有カプセルを投与した二重盲検法比較対照試験が行われ、治療への可能性が検討されている。14人のグループにアスタキサンチンを一日12mg与え、一方7人のグループには偽薬を与えた。その結果、8週間後の痛みの度合は、0.27±0.25であり、コントロール群では、0.45±0.14であった。日常生活に対する満足感スコアは投与群が1.75±0.72に対しCo群は1.67±0.94と改善し、アスタキサンチン投与による治療の肯定的な結果が得られている。9)(図3)

リウマチ性関節炎の鎮痛効果図3 リウマチ性関節炎の鎮痛効果

② 手根管症候群に対するアスタキサンチンの影響

手根管症候群とは、手首に手根管と呼ばれる骨と靭帯で囲まれたトンネル構造の部分があり、その中を神経が手のひらに向かって伸びている。手根管の周囲の組織が腫れたりすると(腱鞘炎がその一例)指と手におこるしびれ感や痛みを特徴とする。この症候群は手首を曲げた状態で繰り返し動かす大工職人やピアニスト、整備工、ときにはゴルフなどの趣味に熱中する人に起こることがある。治療法は副木による手首関節の固定、あるいはステロイド剤の患部への注射、さらには手術を行う場合もある。23)

関連グループは、手根管症候群治療へのアスタキサンチン含有カプセルの効果を評価するために二重盲検比較対照試験を行った。この実験は、無作為に選んだ13人のグループに毎食後一日3粒(アスタキサンチンとして一日12mg)を与え、同様に7人のグループにはin active placeboが与えられ、計20人の被験者は8週間服用を続けた。その結果、昼間の痛みの度合に対して、サプリメントグループでは、初期値1.69±0.99→8週後1.00±0.88、と変化し、コントロールグループでは初期値1.67±0.47→8週後1.50±0.50であった。昼間、痛みの持続時間において、サプリメントグループは、同様に2.15±1.23→1.38±1.44と変化し、一方コントロールグループは、2.17±1.07→2.17±1.34と、ほぼ不変であった。被験者の幾人かは生活スタイルが改善したと報告している。アスタキサンチンの含有製品は、患者の日中の痛みの持続期間を短くし、苦痛を軽減することから手根管症候群には効果的な治療法としての可能性を示している。

③ 単純疱疹、口内炎の治療ないし発症防止効果

これにについては以下のような臨床剤が報告されている。24)

単純疱疹(単純ヘルペス)はヘルペスウイルスによる引き起こされる。唇の返縁部、あるいは陰部に最も多く認められ、1個以上の集簇性水泡からなる疱疹を特徴とし再発性がある。50歳男性は4~6週間ごとに10~14日間の発症を繰り返していた。アスタキサンチン3mg/日を発病期間に2週間服用したことで発病期間が2週間から2日間に短縮した。服用から3ヶ月間経過後も再発をみない。口内炎は、口腔粘膜、舌、歯肉に発生する漬瘍性の炎症でウイルスや細菌による場合もあるが原因はよく分かっていない。治療には抗菌軟膏やステロイド軟膏が使われる。

35歳男性で、12歳から口内の腫瘍性炎症で苦しみ、酸味や刺激のある食事には苦痛をともなっていた。アスタキサンチン2mg/日を3週間服用したところ酸味・刺激のある食事が食べられるようになり、服用を停止すると10日以内に再発した。しかし、再び服用を始めると病状が改善した。その後、アスタキサンチン服用中に再発が見られなかった。

紫外線による日焼け防止、皮膚保護作用

紫外線が与える皮膚への障害は単なる日焼けに留まらず皮膚の老化やガンにもつながる。日光の照射で生体中の水分子からO2を生成することが分かっているが、皮膚の場合
たんぱく質中のチロシン、トリプトファンなどのアミノ酸に光が吸収され、そのエネルギー移動が1O2の生成に繋がる。

1O2はDNAに障害を与えるほか、細胞膜における脂質の過酸化を引き起こし角化細胞死へと導く。実際日光にさらされる機会の多い職業の人たちには皮膚の角化やシワの深い人が多く見られる。

18~60歳の健康な男女で日焼けをしやすい人、もしくは普通に日焼けする人、また色素沈着が無~普通程度を示す21人を対象に、紫外線(UV-A、UV-B)によって一定部位に明確な紅斑が生じる最小線量:最小紅斑量(MED)を測定する方法でアスタキサンチンの効果が調べられた。サプリメントを服用する前とアスタキサンチンとして6mg/日、2週間服用後のMED量は平均2.8milli joule上昇した。効果が最大に現れた人は13.8mjであった。アスタキサンチン摂取により一定の紅斑を生じるのにはより強くエネルギーを必要とし日焼けを起こしにくいことが認められている13)(図4)。

また、坂田らはアスタキサンチン-ジエステル体を含む培地でメラノーマ細胞を培養し、顕著なメラニン生成抑制効果を明らかにしている。14)さらに、坂田らはUV-B照射によるシワの形成及び弾力性の低下に対し、ヘアレスマウス背部にアスタキサンチン塗布によって、シワの形成抑制、さらにキュートメーターによる弾力性の測定においてもアスタキサンチンは有効であったと報告している。14)

紫外線による日焼け防止効果図4 紫外線による日焼け防止効果

DNAの酸化的損傷抑制

酸化的ストレスが老化の元凶であり、老化と遺伝子DNAの酸化的損傷との間に相関性が指摘され、22)癌が発生するにも、転移することにおいてもあらゆる段階でフリーラジカルが深くかかわっていると言われている。癌は一般的には遺伝子DNAが異常をきたすことから始まる。・OHは遺伝子DNAを傷害し、DNAの構成成分であるdeoxy-guanosine(dG)の8位を酸化させ8-Hydroxy-dG(8-OHdG)を産生する。DNA中で酸化された8-OHdGは、修復酵素で切り出され、正常なdGと入れ替わる。ところが、DNA中にそのまま残ってしまったり、別の塩基と入れ替る場合もあり、DNAが突然変異を起こすきっかけとなる。(図5中別府らもGenome Research (Mar,2006)に同様の論文を載せている。)

著者らの研究グループは老齢ラット(26月齢F344、雌)5匹に対しアスタキサンチン混合飼料を摂餌投与(平均21.2mg/日/匹)した後、尿中8-OHdGをELISA法により測定しアスタキサンチン摂取が有意に8-OHdGの排泄量を減少させることを確認した(図6)。6)

8-OHdGの生成図5 8-OHdGの生成

高齢ラットにおけるDNA酸化的損傷抑制効果
図6 高齢ラットにおけるDNA酸化的損傷抑制効果

筋萎縮に対するアスタキサンチンの効果

筋不動時に伴う酸化ストレスの増加が筋萎縮をきたす。老齢化のみならず、ケガ、病気による長期療養によって筋力、運動機能の低下が引き起されることに対し、アスタキサンチンがその維持やリハビリに有効に働くかもしれないと考え、以下の実験を実施した。

実験は、14週齢の雄ラットを、アスタキサンチン0.2%、0.04%、0%含有食餌摂取群の3群で比較検討が行われた。投与開始15日目により、すべてのラットに右足の足関節をギプス固定し、さらに10日間飼育した。

その結果、アスタキサンチン摂取群の筋萎縮は、コントロール群(以下Co群)の萎縮率よりも有意(P<0.05)に低かった。(図7)

細胞内では産生されるO2の程度を反映して、Cu、Zu-SOD発現量が変動するが、Cu、Zu-SOD発現量は、Co群では対照側に比べ固定側のほうが有意に高く、一方アスタキサンチン摂取群では有意差は認められなかった。Co群とアスタキサンチン摂取群共に固定側における酵素発現量を比較すると、Co群は優位に高い値を示した。(図8)

Calpainとユビキチン発現量は、Co群において固定側で有意に高かったが、アスタキサンチン0.2%摂取群の固定側のほうが発現量は低かった。(図9)Cathepsin Lにおいても同様の傾向が見られた。17)

以上の結果は、ギプス固定によって引き起される酸化ストレスの増加が脂質過酸化反応を促進し、細胞膜や筋小胞体は正常な機能を失い、細胞内へのCa2+流入の増大、細胞外への排出低下を引き起す。さらに細胞内Ca2+濃度の上昇は、筋原繊維タンパク質を分解する酵素であるCalpainおよびCathepsin Lを活性化する、と推察される。

以上の内容は第60回日本体力医学会大会(2005年)で発表され、現在はさらにモデルを変えた長期間の試験を継続している。

アスタキサンチン摂取が足底筋萎縮率に及ぼす影響図7 アスタキサンチン摂取が足底筋萎縮率に及ぼす影響

アスタキサンチン摂取が足底筋 Cu,Zn-SOD発現量に及ぼす影響
図8 アスタキサンチン摂取が足底筋 Cu,Zn-SOD発現量に及ぼす影響

アスタキサンチン摂取がギプス固定による足底筋 Calpain発現量に及ぼす影響
図9 アスタキサンチン摂取がギプス固定による足底筋 Calpain発現量に及ぼす影響

CRP値に及ぼす影響

厚生労働省研究班(研究責任者=津金昌一郎・国立がんセンター予防研究部長)は、男性約1万5300人、女性約2万6700人を11年半にわたり追跡調査した結果、大腸がんになる危険性は、CRP値の最高グループ(血液1㍑当たり0.96㍉㌘以上)が最低グループ(同0.24㍉㌘未満)より1.6倍高かったことを発表した(2006年4月)。

C・Reactive Proteinは、体内で炎症が起きると増加する急性局面のタンパク質の一つで肺炎球菌の菌体成分、C-多糖体(Fraction C)反応性タンパクとして分離された。血中のCRPレベルの検査はガン、細菌感染や関節リウマチによる炎症のほか血栓症、糖尿病、アルツハイマーなどの生活習慣病も関係していることが研究されている。また、アメリカ心臓協会は心臓血管病の危険性を調べる新たな手法になる可能性があると考えている。

関連グループはCRPに及ぼす影響を二重盲検法によって25人の被試験者(17人が試験品、8人がプラセボ)に対し8週間追跡した。試験品のソフトカプセルは4mgのアスタキサンチンを含み1日3カプセルを服用した。試験の結果は以下の表の通りで、アスタキサンチンを摂取した試験者は平均20%以上CRPレベルが下がったのに対し、
プラセボ摂取の被試験者の減少はなかった。(図10)25)

アスタキサンチンのCRPに対する効果図10 アスタキサンチンのCRPに対する効果

Ⅱ型糖尿病の発生予防

予備軍を含め1,620万人がかかわりをもつという糖尿病は、近年社会的な関心事となっているメタボリックシンドロームのうちの重大な病態の一つである。

その99%がインスリン非依存型と言われていたⅡ型糖尿病である。我々の研究グループは自然発症モデルラットを使い100%のラットが糖尿病を発症するのに対し、アスタキサンチン摂餌ラットは空腹時血糖値が抑えられブドウ糖負荷後の血糖値の上昇も穏やかで、アスタキサンチン摂餌が発症抑制に有効に働く可能性を見出した。近々その詳細を発表する予定である。

安全性について

小野らの行ったヘマトコッカス藻色素の13週間反復混餌投与毒性実験26)では、H藻色素(乾燥ヘマトコッカス全藻より抽出後のペースト状液体)を0%、0.025%、0.075%および0.25%の割合で含有する粉末飼料について、雌雄各10匹を有する4群について試験されている。その結果、すべての動物が試験終了時まで生存し、体重および摂餌において投与に伴う影響は、認められなかった。

血清生化学的検査では、コレステロールの上昇が用量相関性を示唆していたが、その変化の程度はわずかであり、毒性学的意義は乏しいものであった。血液形態学的検査や臓器重量には、投与による変化は認められず、病理組織学検査においてもヘマトコッカス藻色素の投与に誘発される病変はなく、13週間混餌摂取に伴う明らかな毒性所見は認められなかったとしている。

また、西川らは、ラット雄に対しH藻由来アスタキサンチンおよびβ-カロテンをそれぞれ粉末飼料1.000g中に400mgを添加した過剰供与群と、適量供与群(80mg)、Co群を設け、1群各々10匹を41日間飼育し、成長状態について観察を行った。次に、アスタキサンチンおよびβ-カロテンの各々適量供与群とCo群の3群に分け、臓器重量及び血液生化学検査を行った。

アスタキサンチンまたはβ-カロテンの過剰供与群、適量供与群ともに成長は同程度に進行し、ラットの外観や解剖結果においてもCo群とほとんど差はなかった。妊娠出産率はCo群と変わらず母親ラットは全数、子供を出産し、出産率は100%であった。特に大きな遺伝的毒性を有さないものと考えられる。27)

サイアノテック社は、広告により一般から募った年齢35~69歳までの健康な35人の成人について二重盲検法で8週間の医学的安全性試験を実施している。

全ての被験者は各食事毎に1カプセル、計3カプセル/日を服用した。被験者19名は1カプセル中H藻から抽出したアスタキサンチン2mgとサフラワーオイルを含有するカプセルを、他の16名にはサフラワーオイルのみを含有するカプセル(偽薬)を与え、血圧、代謝全般(グルコース、BUN、クレアチニン、全タンパク、ALPなど17項目)と血球細胞(白血球、赤血球、ヘモグロビンなど13項目)について生化学的検査を実施。治験開始時、4週間目、8週間目に測定した。測定で得られた各項目を比較したところ、8週間にわたるH藻抽出物投与群とプラセボ(偽薬)の摂取群の間において、血清カルシウム、全タンパク量とエオシン好性細胞の3項目を除いて、差は見られなくなった。3項目における差は、大変小さく、医学的に重要でなかったと報告している。28)

川村28)は、14名の外来者に対してアスタキサンチンとして1日8mgを4名、12mgを4名、18mgを6名にそれぞれ30日間使用し、その臨床的知見を以下のように述べている。糖尿病の1名は摂取後血糖値を200mg/dL→96mg/dLまで下げ、摂取中止後再び上昇した。肝障害を持つ4名は疲れがなくなり、体調が楽になったと言う。

特に心疾患に対しては動悸、不安感、呼吸などの臨床病状に改善を認め非常に効果的であったとしている。また、川村は、全般的に排尿量が増えたことを特筆し、被験者の中には下腿部、足首が細くなったことを訴える者もいたとして、興味を示している。18mgを摂取した5名において一時的に軽いめまい、ふらつきを覚えたと言う以外、臨床状態や血液所見、生化学的検査において何ら変化を認めていないと報告している(一部未発表データを採用した)。

アスタキサンチンとサプリメント

アスタキサンチンは各国における多くの機能研究の実績をともなって、2000年に入り初めて国内の市場に登場した。

長い食糧史の中で見慣れているサケの赤味は、昨今、テレビの健康番組や一般の料理番組の中でも”アスタキサンチン”」として取り上げられ、その話題は新鮮で非常に興味深く語られている。サケ、エビ、カニ等を呈色する赤い色素は1980年代に明らかにされた強い抗酸化作用が引き金となって、その後、多くの生理機能の研究対象として取り上げられていった。しかし、多くの人はその利用法、摂取する意義についての理解はまだ浅い。

今回、炎症とアスタキサンチンについて記述したが、われわれが重視している一方の生理活性は脂質の酸化変性の防止効果である。
アスタキサンチンの血清LDLコレステロールの過酸化抑制効果については岩本らによって報告され、29)またラットの飼育試験において、HDLコレステロールの増加と、LDLコレステロールの減少を認め、β-カロテン、カンタキサンチンではこのような効果は認められなかったとしている。30)

LDLコレステロールの過酸化変性は動脈硬化形成に至る重要なステップと考えられ、また、生体膜においては脂質の酸化が進行すれば膜は変性し、膜本来の機能を失う。肝障害、貧血、糖尿病、白内障、血管障害などの生活習慣病はこの様な変性と直結していると考えられている。

関連グループの研究からアスタキサンチンの筋萎縮抑制作用のメカニズムに脂質過酸化と膜機能との関連が示唆され、さらにラットを用いた糖尿病発症遅延効果のメカニズムについては、今後解明していく重要な課題と考えている。

2005年に日本内科学会など8学会が発表したメタボリックシンドロームの概念は、内臓脂肪の蓄積が基となって高血圧、高脂血症、高血糖へとつながってゆく脂質および糖代謝異常の病態である。

「老化はいずれ、”病気”に分類されるようになる」(レオナルド・ギャランテ/マサチュセッツ工科大学)の言葉にある通り、今、老化制御の研究は遺伝子、エネルギー代謝、活性酸素を中心に解明が進められている。

生体成分を無差別に攻撃する活性酸素の酸化的連鎖反応の制御物質が間違いなく健康の維持・増進の重要な鍵を握る一つであろう。

有効摂取量

アスタキサンチンの有効摂取量は、本文中にもあるように、人において0.6mg/日から血清LDLの過酸化を抑制することが報告されている。作用の場が血液中であれば経口摂取量も比較的少量で有効量に達するが、組織全体に及ぶとすれば、通常一日の摂取目安量は2~6mg以上、標準的には4~6mgとなる。我々の関連グループが行った米国における臨床試験ではアスタキサンチンとして一日6~12mgで結果が得られているので参考にされたい。

メッセージ

生命維持活動や運動をする(身体を動かす)うえにおいてエネルギー源はATPの産生がもとになり、ATPの産生には必ずラジカルの発生を伴う。男女の寿命差の理由の一つに、男性の方が基礎代謝によりエネルギー発生率が高いことが指摘されている。

動物種の間においても、単位体重あたりの酸素消費量と寿命との間に明らかな相関が見られる。(例:ゾウ=約100年とネズミ=約2年)活性酸素は体に侵入した病原菌を駆除する一方、疾病や老化への先導的役割を担い、疾病の約90%は活性酸素に起因するとさえ言われている。

社会の老齢化は急速に進み、65歳以上が占める人口割合は予測を上回り、すでに20%を超えた。日本人の平均寿命は男79歳、女86歳(平成17年現在)となり、長い高齢期生活を過ごさなければならなくなった。早めにケアすることによって、身体や肌、脳の若さを維持し、長い人生を楽しむための手段を真剣に考えるのも無駄ではないかもしれない。

引用文献

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21) 大柳善彦:活性酸素と病気、P56~57、P161/化学同人(1994)
22) 吉川敏一:フリーラジカルの科学、p.176、129~130講談社サイエンティフィク(1997)
23) メイヨー.クリニック健康医学大辞典、法研
24) Gene A Spiller,Antonella Dewell,Sally Chaves,:Effect of daily use natural astaxanthin on C-reactive protain.Cyanotech Report
25) Cyanotech Report :Effect of daily use natural astaxantin on C-reactive protein (2006)
26) 大澤俊彦ら監修:ガン予防食品、シーエムシー、138~143(1999)
27) 西川善之ら:甲子園大学紀要 栄養学部編 No.25 (A),19~25(1997)
28) Cyanotech Report:Gene A.Spiller,et.al.,Health Research&Studies Center (2001)
29) 倉繁:Cyto-protection & biolgy Vol.7,338~391(1989)
30) Murillo E.:Arch.Latinoam Nutr.42(4), 409~413(1992)

アスタキサンチン

アスタキサンチンを知る

BioAstin

アスタキサンチンとサケサケは産卵のためにあの激流に逆らって、1日におよそ10数kmもの距離を紫外線を浴びながら遡上する。そして、過酷な運動に耐えたのち、なお一度に3,000~4,000個の卵を産み落とすと言われている。

必然、身体・筋肉は激しい運動や紫外線によって酸素ラジカルの連続的な攻撃に晒され、強度の疲労と障害が生じるはずである。

ところが、サケの耐久力は我々の想像を遥かに越えているようだ。 サケの筋肉内には活性酸素によるダメージを素早く回復する、つまり酸素を有効に効率的に利用する仕組みが体内で働いているに違いない。筋肉の赤味を帯びたオレンジ色は、どのような機能を持った色素なのであろうか。これから解説していくことにします。

身近にあるアスタキサンチン

アスタキサンチンは我々の生活の中に身近に目にすることができる。サケの筋肉、サーモンピンクやエビの甲殻に見られる赤い色素がアスタキサンチンそのものである。しかしサケやエビは自らの体内でアスタキサンチンを合成することはできない。魚介類においては主に藻やプランクトンが造るアスタキサンチンを食餌することによって体内に蓄積され赤味を呈するのである。

エビ、カニの甲殻類においてはしばしばアスタキサンチンはタンパクと結合して存在するため通常は黒ずんで見えるが一旦加熱するとタンパクは変性し、アスタキサンチン本来の色が現れる。また逆にマグロのように赤味の魚が加熱により白っぽく変化する場合があるが、これはミオグロビンと呼ばれるヘモグロビンと類似した、酸素を貯蔵するヘムタンパクである。自然界に広がるアスタキサンチンを含む生物とその含有量を表に示した。

含有量(mg/kg)
Sockeye Salmom 30~58
Coho 〃 9~28
Pink 〃 3~7
Chum 〃 1~8
Chinook King 〃 1~22
Atlantic 〃 5~7
ファフィア酵母* 2000~8000
ヘマトコッカス藻* 10000~25000

*アスタキサンチンを自己合成する生物

釜揚げ桜えび 1.47mg/100g
くるまえび 2.8mg/100g
くるまえび 0.40kg/100g

その他:イクラ、スジコ、エビ、ザリガニ、オキアミ、タイ、キンメダイ、サケ、マス、金魚、ニシキゴイ、ラビンチュラ*(海洋性真核微生物)

静岡県環境衛生化学研究所調べ

アスタキサンチンとカロテノイド

図1 抗酸化に働くカロテノイド及びビタミン

アスタキサンチンとカロテノイド自然界には際立った色彩を放つ生物が多く見られる。

トマト、パプリカ、ニンジン、熱帯魚、フラミンゴ等はカロテノイドと呼ばれる特有の化学構造(図1)を持った、脂溶性の色素によって色付けられている。

黄橙、赤または紫色を呈すカロテノイドは天然に約700種存在すると見られ 、多くの高等植物、一部の植物プランクトンと藻類、真菌及び細菌類によって造られる。自ら合成することが出来ない動物においては藻やプランクトンなどを摂取することによって体内に蓄える。フラミンゴはβ-カロテン、ゼアキサンチンで羽毛をピンクに染め、魚介類の多くはアスタキサンチンを主とし、ツナキサンチンやルテインなども呈色の基となっている。光合成を営む植物はカロテノイドを自ら合成し、それは集光性色素として光エネルギーをクロロフィルに伝達する補助的役割を担う。

一方では光合成に伴って生じる活性酸素の除去に働き、光、酸素による膜の破壊を防御するなど、極めて重要な役割を果たしている。さらに微生物においては走行性に関与する。カロテノイドは炭素数40(時にC30、C35、50)を基本として分子内にイソプレン

CH3

(CH2=C-CH=CH2)n

を縮合した高度な共役二重結合鎖を構成し、分子の端末にイオノン環を持つ特徴ある構造をしている。カロテノイドは構造式上、炭化水素のみで構成されるカロテン類と、末端残基に酸素(O)元素を含んだキサントフィル類に二分され共役系の構造や末端構造が少しずつ異なることによって色調や生物活性に大きな特徴を生み出している。(図1)

カロテノイドを含有する動植物

主なカロテノイド



α、β、γ、δ-カロテン 人参、カボチャ、さつまいも、ほうれん草などの緑黄色野菜、オレンジ、パーム油、卵黄 黄橙色
リコペン トマト、すいか 赤色







アスタキサンチン サケ、マスの身、カニ、エビの殻 赤色
ツナキサンチン はまち、イクラなどの体表部分 赤色
フコキサンチン こんぶ、わかめなどの渇藻類 赤色
カンタキサンチン みかん、マッシュルーム、サケ、マス 赤色
カプサンチン カプサンチン 赤色
ゼアキサンチン とうもろこし、オレンジ、カボチャ、ほうれん草、卵黄、肝臓 黄橙色
ルテイン 緑黄色野菜 黄橙色
クリプトキサンチン カキ、トウモロコシ、オレンジ、卵黄 黄橙色

ビタミンAとカロテノイド

α、β、γ-カロテン、β-クリプトキサンチン、エキネノンなどを代表例とするレチニリデン残基を有するカロテノイドは小腸粘膜上皮細胞あるいは肝臓で代謝されてビタミンAに変化する(プロビタミンA活性)。アスタキサンチンは魚類においてビタミンAに変換されているという報告がある。1,2)さらに、カロテノイドおよびビタミンA欠乏食で飼育したラットの肝臓中にレチノールを認めている。3)しかし、人においては明らかにされていない。

生物の進化と活性酸素

およそ35億年前、地球上に現れた藍色単細胞 Cyanobacteria(Spirulinaはその一種)によって初めて大気中に酸素が放出され始めた。酸素の蓄積はやがて地球上に好気的な有核生物の出現を招き、以後、生物は長い進化の道をたどることになる。しかし、酸素は生命の維持に不可欠な必須性と同時に生体成分に酸化障害を与えてきた。
光合成を営む植物が数多く増えてくると、大気中の酸素濃度はさらに高まっていった。

生物の進化は、酸素濃度から身を守る(酸素毒性を消去する)機能を獲得することでもあり、その機能を備えた生物のみが生存に耐えてきた。
生命を保ちつづけるため酸素を必須とするわれわれにとって、酸素はまた疾病を招き、老化や寿命に悪影響を与える重要な要因ともなってきていることが多くの研究で分かってきた。

アスタキサンチンの商業生産

ヘマトコッカス藻の合理的培養技術の確立

アスタキサンチンに関する様々な研究は主として1980年代に入ってからである。それにはオキアミ抽出のものが使われていた。しかし、アスタキサンチンが単なる色素ではなく、健康の維持増進や代替医療にまで広く貢献できる大きな期待があったにもかかわらず市場への参入をさまたげていたのは生産コストの高いことと独特な臭いであった。それを可能にしたのがヘマトコッカス藻(H藻)の合理的培養技術の確立であった。衛生的にしかも大量、低コストを可能とする商業的な生産が行えるようになってようやくアスタキサンチンはひのき舞台へのぼることとなった。

アスタキサンチンの場合、他のカロテノイドと比べ生合成をする生物は多く存在しない(前項参照)。現在、アスタキサンチンの生産のためにはファフィア酵母、オキアミ(プランクトン摂取により体内に蓄積されたもの)から製したものに比べ、ヘマトコッカス藻由来によるものが圧倒的に主流となっている。

ハワイ島の独特の自然環境は藻類の培養にも最も適していると言えるであろう。
サイアノテック社はハワイ島西側の海岸地帯に豊富な太陽光と気温の恵み、岩盤を透過した水の使用、清浄な空気、等あらゆる条件で藻を育成する環境に恵まれているため、閉鎖式と屋外流路式を併用した循環装置を両立させることができ、高品質、低コスト化を実現した。

アスタキサンチンは藻体から溶媒を使わず、完全な超臨界ガスのみによって抽出され、現在オイル状の製品(アスタキサンチンとして7%~10%含有)が国内に輸入されている。更に35%前後を含有したオイルを原料に国内で粉末タイプ(2%含有)、透明水溶液タイプ(1%含有)、水分散タイプ(0.15%含有)に加工し各種の用途に供給されている。
本品はU.S.FDA及びCanadian Food Inspection Agencyに登録されている分析法によって適格に行われ、製品各々の含有量はフリー体(非エステル体)としての数値を表示しています。

アスタキサンチン生産に主として使われている種

緑 藻(Chlorophyata)
緑藻類(Chlorophyceae)
クラミドモナス目(Chlamydomonadales)
(和:コナミドリムシ目)
ヘマトコッカス(Haematococcaceae)
ヘマトコッカス(Haematococcus)
Volvocales:ボルボクス目
(和:オオヒゲマワリ目)に分類する場合もある。

体内で働く抗酸化物質と活性酸素消去作用

生成する活性酸素に対応するための自然防御機構として、生体はSODやカタラーゼ等、数種の酵素あるいはラクトフェリン、セルロプラスミン等のタンパク質を自ら合成しラジカルの発生を消去している。

しかし、ストレス、環境汚染や化学品を含む食品などによる現代生活の中では、ラジカル生成量が増し、体内で自然形成される抗酸化物質だけでは対応しきれない状況が生れる。その場合、他の抗酸化物質で、ラジカルの連鎖反応を遮断しなければならない。その主要な物質としてビタミンE、カロテノイド、ビタミンC、ポリフェノールなどが列挙されるが、これら天然の抗酸化物質はほとんど植物に由来すると考えてよい。

植物はクロロフィルによって光合成を営み、その過程で活性酸素が発生することが知られており、その場合、ビタミンEやカロテノイドは光や酸素によって膜の破壊を防御する役割を果たしている。植物は自己防衛のために自らそれらを合成する必要がある。ビタミンE(以下V.E)は抗不妊ビタミンと呼ばれた時もあったが、活性の本質は脂質の過酸化、特に生体膜(細胞、赤血球、ミトコンドリア、ミクロソームなど)を構成する脂質の過酸化を抑制することと位置づけられる。

ポリフェノール類に属するフラボノイドは植物界に広く分布し、野菜、果実、樹皮、特に柑橘類に多く含まれ、1O2・OH、2-、H2O2などの活性酸素種の消去作用が明らかにされている。4)

ビタミンE 大豆、胚芽、レバーやうなぎ、植物性油等
ビタミンC パセリ、ブロッコリー、レモン、いちごなど野菜や果物
ポリフェノール アントシアン 赤ワイン、いちご、なす、ブドウ等赤や紫のものに含まれる色素 赤〜紫
タンニン類 タンニン お茶やカキの渋み成分
カテキン 各種お茶の主成分
フラボノイド類 ケルセチン タマネギ、ブロッコリー、赤ワイン、ココア、イチョウ葉
イソフラボン 大豆など豆類
イソフムロン ビールの原料であるホップ

機能から見た生体の酸化障害に対する防御システム
文献30.二木鋭勇 生体の酸化的障害とそれに対する防御システムより一部編集

I. 予防的抗酸化物(Preventive antioxidants): フリーラジカル、活性酸素の生成の抑制

(a) ヒドロペルオキシド、過酸化水素の非ラジカル的分解
カタラーゼ 過酸化水素の分解
グルタチオンペルオキシターゼ(細胞質) 過酸化水素、脂肪酸ヒドロペルオキシドの分解
グルタチオンペルオキシターゼ(血漿) 過酸化水素、リン脂質ヒドロペルオキシドの分解
リン脂質ヒドロペルオキシドグルタチオンペルオキシターゼ リン脂質ヒドロペルオキシドの分解
(b) 金属イオンのキレート化、不活性化
トランスフェリン、ラクトフェリン 鉄イオンの安定化
ハプトグロビン ヘモグロビンの安定化
ヘモペキシン ヘムの安定化
セルロプラスミン、アルブミン 銅イオンの安定化、鉄イオンの酸化
(c) 活性酸素の消去、不均化
スーパーオキシドジスムターゼ(SOD) スーパーオキシドの不均化
カロテノイド 一重項酸素の消去

II ラジカル捕捉型抗酸化物 (radical-scavenging antioxidants)

ラジカルを補足して連鎖開始反応を抑制し、また連鎖成長反応を断つ水溶性
ビタミンC、尿酸、ビリルビン、アルブミン 水溶性ラジカルの捕捉、ビタミンEなど脂溶性ラジカル捕捉型抗酸化物の再生
脂溶性
ビタミンE、ユビキノール、カロテノイド 脂溶性ラジカルおよび水溶性ラジカルの捕捉安定化

III 修復・再生機能 (repair and de novo)

リパーゼ、プロデアーゼ、DNA修復酵素などによる損傷した膜脂質、タンパク質、遺伝子の修復、アシルトランスフェラーゼなどによる再生

IV 適応機能 (adaptation)

必要に応じて抗酸化酵素などを産生し、特定の場に遊走させる

ヘマトコッカス藻の生体

H藻は淡水に育ち葉緑体をもって光合成を営んで生活する。最大35μm程の卵型をした単細胞の緑藻で、栄養に富んだ培地では緑色のコロニーを作り2本の鞭毛で活発に遊泳する。温度、光、栄養、乾燥などの環境が個体の生活に適さない条件に変わると、生き残るための手段として、細胞内に胞子を形成し休眠状態に入る(シスト化)。胞子形成と同時に鞭毛を失って、活動期の細胞と比べると数倍も大きな球状体に成長する。細胞は、培養槽全体が真っ赤になるほどヘマトクローム(アスタキサンチン)を合成し蓄え、乾燥や光ストレスにも耐える準備をするのである。

活動期のヘマトコッカス細胞
活動期のヘマトコッカス細胞
シスト化した細胞
シスト化した細胞

ハワイ島コナでの商業生産

ハワイ島にそびえる4000mを超える2つの山は明らかに西側の海岸地帯の気候に影響し、藻類培養に絶好な条件を与えている。気温はいうまでもないがこの地区は実に太陽光が豊富である。90エーカー(約36万㎡)の敷地を擁し、1983年来、スピルリナの培養を始めたサイアノテック社は1995年よりH藻の培養とアスタキサンチンの生産を開始した。

サイアノテック社が採用したのは全工程の3/4をクローズド(閉鎖型)循環式による段階拡大培養を経て、最終工程の7~10日間を流路式屋外槽で自然と同じ環境で、光を直接(外壁を透過させることなく)細胞に照射させることによってアスタキサンチンを初めとする種々のカロテノイド合成を誘導し促進させる培養システムである。特にクローズド期間のPhyto Max PCS (Pure Culture System)と呼ばれる閉鎖循環式培養で活動期細胞を高濃度に増殖させたのち、流動式オープン槽へ移行する連系システムは合理的で、本法の採用によって微生物からのコンタミネーションの防止とともにアスタキサンチン含有量の高いH藻が得られ、高品質のアスタキサンチンの量産化と低コスト化に飛躍的な影響を与えたのである。

Bio Astinは天然アスタキサンチンを含むほか、β-カロチン、カンタキサンチン、ルテインなど数種類のカロテノイドを含有しU.S.FDAやOrthodox Union Kosher(食物を独自の観点で制約するユダヤ系連合体)にも認められた栄養補助食品として欧米各国で普及し、その有用性が注目されている。

閉鎖循環式 Phyto Dome
閉鎖循環式 Phyto Dome
流路式屋外槽
流路式屋外槽

H藻からの超臨界ガス(CO2)抽出されたアスタキサンチン

H藻は細胞破砕された後、超臨界炭酸ガスによって抽出される。この際、有機溶媒は使われない。アスタキサンチンは常温で油性液体であり、抽出後のOleoresinはサフラワー油で含量調整をされる。標準的な成分構成は、総カロテイド7.7%(そのうちアスタキサンチンは7%以上)不飽和脂肪酸39~54%、飽和脂肪酸10~11%、炭水化物28%、水分4%、たんぱく質0.7%である。主要な脂肪酸組成はリノール酸32%、オレイン酸15%、パルミチン酸8%、リレイン酸5%となっている。

アスタキサンチンの分子内には2つの水酸基(-OH)があり、この部分で脂肪酸とエステル結合している場合が多い。H藻由来のアスタキサンチンは、その中の約80%がモノエステル体、12%がジエステル体で残りはジアルコール体(フリー体)である。

ちなみに、オキアミはジエステル、ファフィア酵母はジアルコール体が多いとされている。5)アルコール体よりエステル体の方が化学的には安定である。従って商品の状態ではむしろエステル体が良い。
また、吸収もジエステル体が一番良いといわれている。5)著者らの研究グループでもラットに経口投与したときのアスタキサンチンのエステル体の体内分布を認めている。(図2)

アスタキサンチンの生理活性はジアルコール体(フリー体)で発現される。6)エステルは体内に存在するエステラーゼによりはずされフリー体に変換される。アスタキサンチンの活性部位は一重項酸素(1O2)の場合、水酸基やカルボニル基の有無、共役二重結合の長さに支配される7)とされ、一方、寺尾はβ-イオノン中のカルボニル基が補捉ラジカルの安定性を増大させ、従ってカンタキサンチンやアスタキサンチンの方がβ-カロテンよりも有効に作用する可能性を指摘している。8)また、アスタキサンチンには立体異性体が存在するが、異性体による生物活性の違いについては認められていない。7)

アスタキサンチンの体内分布
図2 アスタキサンチンの体内分布

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引用文献

1) 井上正康:活性酸素と医食同源、265~269、共立出版
2) 幹渉ほか:海洋生物のカロテノイド、恒星社厚生閣(1993)
3) 松野、幹:化学と生物、28(4)、219-227、学会出版センター(1990)
4) 二木鋭雄、島崎弘幸、美濃真:「抗酸化物質フリーラジカルと生体防御」P7.P267、学会出版センター(1996)
5) Food Style 21、5(12)、30、食品化学新聞社(2001)
6) MIKI:Pure.Appl.Chem.63、141-146(1991)
7) 幹渉:平成二年度日本水産学会秋季大会講演要旨集、P184(1990)
8) 寺尾純二:第3回カロテノイド研究談話会講演要旨集