2022 年 7 月 10 日公開
オートファジー機構に関与するアスタキサンチンとフィコシアニン
オートファジー機構に関与するアスタキサンチンとフィコシアニン
近年、アンチエイジングに深く関与する体内の機構に、オートファジーの仕組みが注目されている。
アンチエイジングに貢献する健康機能素材として広くしられているアスタキサンチンはアンチエイジングに深くかかわるオートファジー(細胞の自食)機構に好影響を与える可能性が指摘されており、注目度が高まっている。
アスタキサンチンについては、ミトコンドリアの呼吸(エネルギー産生)を向上させる働きが確認されており、この働きが、オートファジー機構への効果につながっている可能性もある。
体内で起こるオートファジーの仕組みが注目
オートファジーは、細胞内にたまった不要なタンパク質などを、リサイクルし、体内で再活用するための仕組み。こうした働きがあるため、細胞は恒常性を保つことができ、老化抑制につながるという。この仕組みを発見した大隈良典氏はノーベル賞を受賞したことで脚光を浴びることとなった。
オートファジーが何らかの理由で機能不全になると、疾病や体調不良、肌の老化などにつながる可能性があると言われている。
オートファジーを活性化する食材は
アスタキサンチンは、このオートファジーを活性化する働きを持つことが示唆されており、注目が高まっている。’22年7月8日に放映されたテレビの情報番組に、大阪大学大学院教授で、大隈氏と共にオートファジーの研究で著名な吉森保氏は番組中のトークに、オートファジーを活性化する成分の一つとしてアスタキサンチンが(その他ケルセチン、レスベラトロール等と共に)紹介され話題となった。
また、番組とは別に、フィコシアニン(スピルリナに特異的に含まれるブルー色素成分)のオートファジー活性についても Liao G et al.:Sci Rep 6,34564(2016)に報告されている。
ミトコンドリアの酸化ストレス抑制を確認
弊社は、長崎大学との共同研究で、ミトコンドリア由来酸化ストレスに誘因される筋繊維細胞死が、アスタキサンチンを摂取することにより防止できることが確認された。
アスタキサンチンはミトコンドリア内膜に入りやすく、同研究によってアスタキサンチンの摂取が呼吸鎖タンパク質から生産される活性酸素種を消去し、ミトコンドリア障害によって引き起こされるアポトーシスの誘導を抑制することが明らかにされている。
細胞膜機能を保全
さらに弊社は山口大学においても筋線維細胞萎縮モデルマウスによる研究を行なっている。
この研究では、細胞膜構造における脂質成分の過酸化変性が膜機能に異常な影響を与え、細胞のアポトーシスを引き起こすことが着目された。
これらの結果から、アスタキサンチンの、ミトコンドリアや細胞膜に与える影響がオートファジー機構への効果にもつながっているのではないかと推測される。
アスタキサンチンとフィコシアニンがオートファジーの活性に与える影響についての研究は、海外の研究機関において実施されているので以下に紹介する。
<用語の説明>
AX :Astaxanthin
Phyc :Phycocyanin
AMP-activated protein kinase (AMPK)
細胞内のエネルギー状態を監視し、糖・脂質代謝などを調節する酵素。
老化の重要な調節因子として機能することが示唆されている。
Phosphoinositide 3-kinase(PI3K)-Akt 経路
細胞の生存及び死の周期を制御するシグナル伝達経路。
mTORC1(mammalian target of rapamycin complex 1)
栄養素・エネルギー状態のセンサーとして機能し、細胞内の物質代謝やエネルギー産生を調
節するタンパク質複合体。mTORC1 の活性阻害は、癌細胞の増殖や血管新生を抑制する。