ストレス社会が求めるもの
中央アジアが原産とされる大麻は、日本においては古くから衣・食・住、さらには伝統行事にも利用され、人々の生活に密接に関わってきた。
しかし、大麻の中には向精神作用を持つ種もあり、1948 年の大麻取締法制定以後、こん日まで違法な薬草としての強い認識が定着してきた。
大麻の生理活性成分は、炭素数 21 で構成される一連の近似した化学構造を持つ 100 種以上のカンナビノイドと総称される。
その中の一つ、THC(Tetrahydrocannabinol)は鎮痛、鎮静、抗炎症作用の他、幻覚、陶酔作用を持ち、多幸感を発現するため依存性が生まれる。
この様な著しい作用を持つため、THC を含んでいる物に対しては「麻薬及び向精神薬取締法」によって厳しい取締りの対象となる。
THC 以外のカンビナイドも鎮痛作用や睡眠誘導、不安に対し精神的な安定をもたらす作用がある一方、習慣性を伴わない。そのため、ストレスの多い社会において、精神的な健康を求めて、その用途が広まっている。
カンナビノイドの中で多くを占めるのは CBD(Cannabidiol)である。
CBD のみを抽出し 100%近くなるまで純度を高めた精製品が CBD アイソレートとして市販され、多くの最終商品はアイソレート品を主流原料としているが、今後は THC を除く数種のカンナビノイドが配置されたブロードスペクトラムタイプが主流となってくるであろう。
CBD 単体と比べ複合的な生理活性が期待できることは非常に興味深い。
以下に弊社の開発した製剤について紹介する。
CBD アイソレートは、ロウ状のしっとりした感じの白い粉末である。一方、ブロードスペクトラムタイプは、流動性の全くない半透明なハードワックスである。いずれも水不溶性で特に後者は使い勝手の悪い剤型である。
そのまま摂取しても吸収しにくく、多くは中鎖脂肪酸などの食用油脂に混和溶解して摂取するが、舌下に含み、粘膜からの吸収をはかる方法が良くとられている。しかし、使用するにはより簡便に、吸収も優位な製品が好まれるのは言うまでもない。
弊社はこれらカンナビノイド類を様々な食品形態に適応でき、また、血中移行も容易となる nano サイズ粒子とした粉末タイプ及び液体タイプの加工製剤を開発(特願 2023-40400 号)し、一部へのサンプル出荷も始めた。
粉末タイプは、カンナビノイドを 10%含有し、水に容易に均一分散し、熱、pH に安定、変色も起こりにくい。液状タイプはより透明感の高い安定な水溶液が得られる。
従って様々な形態の商品に利用されうる。
nano 粒子は、一般的には化学的な反応、又生体への反応(生理反応)も向上するため多くのメリットを生むが、反面 CBD 特有の苦味はそのまま出てしまう。
商品の形態によって、例えばゼリー、グミや通常食品への添加等、苦味の少ない製剤が求められるであろう。そのための水溶性粉末、液体タイプの製剤も用意されている。
カンナビノイドは高価な素材のため製品コストをより縮小できるのであるなら一層好ましいことである。摂取後の血中移行効率の向上によって、摂取量又は配合量の調節が可能となれば、ユーザーにおいてもコストと共に健康メリットも享受できる。
弊社は、今後の検討として、摂取後の成分動態の観察を含め、さらなる製剤研究を計画している。